「糖」が薬になる?糖の生物学を化学の力で明らかにする

糖は甘いだけじゃない
細胞の中ではたらく糖

「糖」というと、砂糖やブドウ糖,オリゴ糖など,食品としてのイメージが強いと思います。糖は食品としての機能以外にも,様々な生命現象に関与する生体情報分子としての顔をもっています。例えば,血液型(ABO式)は赤血球上にある糖のつながり方と糖の種類の違いです。また,がんになると細胞表面にある糖鎖の構造も変化するので、がんの診断にも使われています。インフルエンザウイルスは細胞表面に存在する特定の糖鎖構造を介して感染します。したがって糖のもつ機能を知ると、がんや感染症などの新しい薬や新しい材料を作ることができます。
私たちの研究室では,化学反応や酵素反応により、糖と糖をつなぎあわせて(グリコシル化とよぶ)新しい糖鎖を作り出す研究しています。私たちが作った糖が、前立腺がんや免疫、細菌の感染、神経細胞への作用、さらに世界に150人しかいない希少疾患(糖鎖不全症:NGLY1病)治療薬の探索などなど、糖鎖が関わる生物機能の解明研究に役立っています。わたしがちしか作れない糖鎖を積極的に利用して,医療分野や病原性細菌を除去する材料の開発など,世の中の役に立つ「群馬発の新しい糖質関連物質の創出」を目指しています。

研究室についてSTUDENT
研究室の実験の様子
研究室(学生部屋)の様子
教授 松尾 一郎 MATSUO ichiro
研究キーワード 糖鎖,オリゴ糖,糖ペプチド,希少疾患、糖鎖分子プローブ合成,酵素阻害剤合成,糖質関連酵素
研究分野 有機化学生体分子化学農芸化学機能生物化学
主な研究テーマ
  • 生理活性を有する糖鎖の合成に関する研究
  • 糖質関連酵素の活性検出プローブの開発
  • 糖鎖認識タンパク質と糖鎖との相互作用解析に関する研究
研究概要

第3の生命情報鎖として注目されている糖鎖を化学の立場から研究している。糖鎖の機能解明に必要な糖鎖分子プローブの設計および合成,糖質関連酵素阻害剤の合成,生理活性糖脂質の化学修飾,糖脂質分子の合成,糖鎖修飾材料の開発を行っている。新規糖質関連タンパク質(レクチンや酵素)の探索や解析,糖質関連酵素阻害剤の探索,カロリーメーター,核磁気共鳴機器を用いた糖鎖認識タンパク質と糖鎖との相互作用解析を通して糖鎖のもつ情報を定量的に読み取り,創薬研究や新規高機能生体材料開発へと展開すべく研究を行っている。

提供できる技術 ・応用分野

糖鎖および糖質関連分子の合成・糖脂質合成・糖質関連分子の化学修飾・糖質関連分子の構造解析・HPLC、LC-MSによる生体分子の分離・分析

主要な所属学会

日本糖質学会,日本農芸化学会,日本化学会,日本ケミカルバイオロジー学会,日本生化学会

論文
  • Stereocontrolled Synthesis of Lyso-phosphatidyl β-D-Glucoside. ChemistrySelect, 6, 6811-6815 (2021).
  • Synthesis of α(1,2)-linked oligomannoside derivatives through one-pot glycosylation, Carbohydr. Res., 494,108072 (2020).
  • A bioactive mammalian disaccharide associated with autoimmunity activates STING-TBK1-dependent immune respons, Nat. Commun., 10, 2377 (2019).
受賞歴
  • 平成16年度 日本糖質学会奨励賞
  • 平成19年度 日本農芸化学 奨励賞
メディア情報
  • https://www.riken.jp/press/2022/20221213_1/index.html
  • https://www.gunma-u.ac.jp/information/184654
最終更新日: