サイズ排除クロマトグラフィーで多糖の分子量を測定しています。
多糖の試料を調製しています。

多糖のらせん構造,ゲル,集合体
 多糖はグルコースなどの単糖類が共有結合でつながった高分子であり,環境適合性と生体親和性に優れた材料として医薬品や食品などに広く用いられています。天然で産生する多糖にはらせん構造を持つものもあり,水溶液やゲルなど様々な状態で存在します。これらの多糖の物理化学的性質や薬理作用は化学構造の違いだけで無く,固有のらせん構造に由来しています。また,多糖のらせん構造は,タンパク質や核酸などの生体高分子との集合体の形成などにも関係します。近年は,その薬理作用だけでなく,集合体を利用したドラッグデリバリーシステムの研究が盛んに行われています。
 我々の研究室では水溶性の多糖を主に研究しています。その中でもスエヒロタケから産生するシゾフィランは水溶液中で三重らせん構造を形成しており,大変堅い棒の形をしています。このため,濃度の高い水溶液中では棒が並んで液晶になります。図1に偏光顕微鏡を使って撮影した写真を示します。写真に見られる縞模様はコレステリックピッチと呼ばれ,液晶構造がらせんを巻いていることを表しています。研究室では,その他の多糖についても化学反応を用いてその性質を変化させ,多糖という魅力的な材料を広く利用できるように研究を行っています。

研究室についてSTUDENT
研究室ゼミの様子
助教 吉場 一真 YOSHIBA kazuto
研究キーワード 高分子,ゲル,液晶,光散乱,熱分析,誘電分散
研究分野 物性物理学ナノマイクロ科学高分子有機材料
主な研究テーマ
  • 高分子の溶液中の分子形態の研究
  • 天然多糖の化学修飾反応による分子形態と物理化学的性質への影響
  • 異方性ゲル材料の作製,及び液-液接触法によるゲル成長ダイナミクスの解明
研究概要

多糖類の水溶液への溶解性の向上,溶媒条件による機能化のために多糖の化学修飾を行っている。導入された置換基の種類により,多糖鎖に新しい相互作用が働く,あるいは多糖鎖が形成する多重らせん構造などが構造変化する。新しいバイオマテリアルの開発することを目的として,化学修飾された多糖について分子量測定を基礎とした溶液中の分子形態と機能性について研究している。SEC-MALS法などを用いた新しい分子量測定法に対する精密解析方法の開発,多糖のハイドロゲルを中心とした異方性ゲル材料の作製の研究も行っている。

提供できる技術 ・応用分野

天然多糖の化学修飾,サイズ排除クロマトグラフィー,静的・動的光散乱測定,熱測定,誘電緩和測定,ゲル形成メカニズムとダイナミクス

主要な所属学会

高分子学会,日本熱測定学会,日本バイオレオロジー学会

論文
  • Preparation of electro-spun konjac glucomannan fabric with entrapped DNA and dynamics of adsorption of acridine orange for carcinogen removal application. Adsorption, in press (2022)
  • Association with Imidazole in the Cooperative Order‒Disorder Transition in Aqueous Solution of Schizophyllan. Langmuir, 38, 1748‒1756 (2022)
  • Gel growth of aqueous konjac glucomannan solution containing sodium trimetaphosphate dialyzed with dilute sodium hydroxide. Carbohydr. Polym., 255, 117329 (2021).
最終更新日: