廃糖密の活用法(右下への分離へ)と 従来の活用法(左下の蒸留残査へ)

精糖工場の副産物として廃糖蜜は世界で約5,100万トンも年間発生しており、色度と粘性が非常に高い液体です。廃糖蜜は糖分を多く含むため、最近では石油に代わるカーボンニュートラルなバイオエタノールの原料として利用されていますが、発酵後の蒸留残渣には精糖工程で発生したMLP(melanoidin-like products)という色素が引き続き残るため、河川や海洋への投棄ができません。私たちは独自のシステムでMLPを分離・回収して、色度を下げた脱色廃糖蜜を得る事に成功しました。また、MLPに重金属結合特性がある事を明らかにして、植物修復効果の促進剤としての可能性を見つけました。
植物修復とは、植物が根から水分やミネラルを吸収する能力を利用して土壌や地下水中の汚染物質を吸収させる技術です。植物修復には生育環境によって汚染物質の吸収率が異なるという問題がありますが、私たちはMLPを添加する事によって土壌中の重金属の移動性を高めることで吸収率を高める研究を行なっています。具体的には、硫酸銅や硝酸鉛存在下でMLP添加により「アブラナ科植物に多くの金属を吸収させるが、取り込まれた金属錯体の毒性は低くなる」事を明らかにしました。収穫した菜種油はバイオディーゼルの原料に、収穫後に発生するバイオマスは火力発電の燃料として利用して重金属を含む焼却灰は回収するので無駄がありません。

助教 秦野 賢一 HATANO kenichi
研究キーワード 植物活力剤,植物修復,環境浄化,廃水処理,蛋白質,構造解析
研究分野 機能生物化学環境解析評価環境保全対策
主な研究テーマ
  • 塩性土壌の植物修復技術への食品廃棄物の活用
  • 食品廃棄物の植物活力剤としての可能性の検証
研究概要

植物を用いて重金属汚染土壌を修復する(植物修復)研究を行なっている。これまで,精糖工場から排出される廃糖蜜からメラノイジン類似生成物(MLP)を除去するシステムを考案した。現在,MLPを用いた各種実証研究を行なっている。一方で,イチョウ種子に含まれる生理活性蛋白質(脂肪運搬蛋白質や抗真菌蛋白質等)の高次構造解析を進めて種子の発芽メカニズム等の研究も行なっている。

提供できる技術 ・応用分野

環境負荷低減技術,保全修復技術

主要な所属学会

日本環境化学会, 環境科学会

論文
  • Controlled release of molasses melanoidin-like product from hybrid organic-inorganic silica xerogels and its application to the phytoextraction of lead through the Indian mustard, Environ. Sci. Pollut. Res., doi:10.1007/s11356-021-13363-1 (2021).
  • Simultaneous suppression of magnetic nanoscale powder and fermented bark amendment for arsenic and cadmium uptake by radish sprouts grown in agar medium, Environ. Sci. Pollut. Res., 26, 14483-14493 (2019).
  • Molasses melanoidin-like products enhance phytoextraction of lead through three Brassica species, Int. J. Phytoremediation, 20, 552-559 (2018).
メディア情報
  • 次世代肥料を研究開発 – 農作物の高付加価値化に挑む,秦野 賢一,群馬経済新聞社, 新年特別号1部1面記事, 2020年1月1日.
最終更新日: