独自の評価・解析技術を武器に高機能な高分子材料を世の中へ!

高分子(ポリマー)とは、モノマーが共有結合で連結したものであり、分子量が1万以上のひも(鎖)状分子です。材料の物性や機能性において、金属材料や無機材料では原子の並び方が重要であるように、高分子材料では分子鎖の並び方が非常に重要となります。そのため、高分子フィルムや繊維を「延伸」したり(引っ張ったり)、「熱処理」したり(加熱したり)することによって「分子鎖を並べる」ことで、高機能な高分子材料を創製しています。このような高分子材料は、食品包装材料や自動車材料、医療材料など私たちの身の回りの多くの製品に利用されています。
しかし、分子鎖は長いひも状分子であるため、これらを延伸や熱処理等の成形加工によってきれいに並べることは簡単ではありません。例えば、分子構造(分子鎖の種類)や分子量(分子鎖の長さ)、成形加工の条件(温度や時間など)によって、並び方や並びやすさが異なります。そこで、このような高分子の特性を掴み、自由自在に操れるようになるために、成形加工前の分子鎖の動きやすさを評価したり、成形加工過程で分子鎖が並ぶ様子を追跡したりします。これらの評価を行い高分子の特性を解明することで、従来はトライアル・アンド・エラー的に行っていた高分子材料の創製プロセスが予測可能なものとなります。これにより、高機能な高分子材料を作るだけではなく、低環境負荷・低コストでの材料創製を目指します。

助教 髙澤 彩香 TAKAZAWA ayaka
研究キーワード 高分子材料,高分子構造,高分子物性,フィルム,繊維,延伸,インプロセス計測
研究分野 材料工学機能物性化学高分子
主な研究テーマ
  • 高分子融体からの製膜および繊維化による高機能材料の創製に関する研究
  • 静的/動的挙動解析の融合による絡み合い評価の研究
研究概要

高分子融体(融点以上の非晶のみの状態)を延伸することで製膜や繊維化を行っており、低環境負荷型成形法(グリーンプロセッシング)による高機能材料の創製に取り組んでいる。
延伸の役割は、高分子を所望の形に成形する(形作る)ことができるとともに、分子鎖を配列させることができる点にある。このようにして形成された高分子のナノ構造は、材料のマクロな物性や機能性へ直接的に反映されるため、分子鎖を配列させることは非常に重要である。しかし、高分子には分子鎖の長さやその分布、剛直性、相互作用など一次構造に由来する様々な因子が存在するため、トライアル・アンド・エラー的な材料創製になりがちである。一方で、我々は成形加工前の融体の分子鎖の動きやすさ(分子運動性・緩和時間)をパルス核磁気共鳴(NMR)測定やレオロジー測定により評価し、成形加工過程での構造形成挙動をインプロセス計測により評価する技術を保有している。これらの評価手法を組み合わせることで、材料特性と延伸挙動の学術的理解に基づいて成形プロセスを決定することができ、高機能な高分子材料を作るだけではなく、低環境負荷・低コストでの材料創製を可能にしている。

提供できる技術 ・応用分野

高分子成形加工,製膜,紡糸,評価・分析,インプロセス計測

主要な所属学会

プラスチック成形加工学会,繊維学会,高分子学会,日本ゴム協会,日本熱測定学会

論文
  • Oriented Crystalline Structure in Melt-Drawn Ultrahigh-Molecular-Weight Polyethylene Induced by Entanglement Networks, Polymer, 313, 127683 (2024).
  • 高分子繊維アクチュエータの動作原理解明に向けた「その場」計測, 日本ゴム協会誌, 第96巻第5号, 119-125 (2023).
  • Effect of Blending Small Amount of High-Density Polyethylene on Molecular Entanglements during Melt-Drawing of Ultrahigh-Molecular- Weight Polyethylene, Polymer, 241, 124528 (2022).
受賞歴
  • 2024年繊維学会年次大会 優秀口頭発表賞
  • MRM2023/IUMRS-ICA2023, Graduate Student Award (Poster Award of MRM2023)
  • 第72回高分子学会年次大会 優秀ポスター賞(2023年)
  • 日本ゴム協会2022年年次大会 若手優秀発表賞
  • プラスチック成形加工学会第28回秋季大会 ベストポスター賞(2020年)
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