光(X線)で物質の性質を見るって?

共鳴非弾性X線散乱配置図
共鳴非弾性X線散乱の発現機構

物質の材料としての性能には、物質内の電子の挙動で決まるものが多数あることが知られています。一方、物質に光をあてたとき、物質が示すリアクションは、使用した光の性質(波長・偏光など)と、物質のもつ性質(構成元素の種類・結晶構造・秩序状態など)との組み合わせにより多種多様であることもわかっています。
 従って、『ある波長のX線領域の光だけを選び出す』など、使用する光の性質を上手に設定すると、電子の挙動に起因する物質の性質を入手できます。ただし、その際に得られるデータは、肉眼で物質の『外観を見る』場合とは異なり、大変複雑であるため、データを解釈して物質の『性質を見る』ためには、質の良い理論の助けが必要となります。
 当研究室では、主にX線(光)と磁性体(物質)の関与する現象を理論的に(紙と鉛筆とPCを使って)解明する研究を行っており、様々な興味深い現象に対し、『何が起きている?どうすれば効率が上がる?』といった疑問に回答できる理論の構築を目指しています。構築した理論の内容が、科学・技術の発展にわずかでも貢献すると評価を受けたり、理論で予言した未知の現象が、後に実験で検証されたりしたときの達成感は、研究を継続する際の大きな動機付けとなっています。

教授 長尾 辰哉 NAGAO tatsuya
研究キーワード 強相関電子系,共鳴X線非弾性散乱,多極子秩序,多体問題,磁性理論
研究分野 物性物理学
主な研究テーマ
  • 共鳴X線散乱の理論研究
  • 多極子秩序相の特異なふるまいの理論研究
  • 磁気秩序系の光プローブ観測の理論研究
研究概要

磁気秩序,多極子秩序など,長距離秩序を有する系のうち,新規材料等の候補として有望な物質において,基底状態や励起状態の性質を,X線を中心とした光プローブで観測する技術に対し,その理論解析を行うためのモデル構築,実際の解析,新規物性の予言や既存データに対する理論解釈の提案などを行っている。

提供できる技術 ・応用分野

固体の物理現象に対するメカニズムのモデル構築,数値計算

主要な所属学会

日本物理学会

論文
  • Collective excitations in Na2IrO3, J. Phys. Condens. Matter 28 (2016) 026006.
  • Effect of broken symmetry on resonant inelastic x-ray scattering from undoped cuprates, J. Phys.: Condense. Matter, 27 (2015) 186602.
  • Magnetic excitation in resonant inelastic x-ray scattering of Sr2IrO4:A localized spin picture, Phys. Review B 89 (2014) 064410.
受賞歴
  • IOP Outstanding Reviewers Awards 2022 (2023)
最終更新日: