触媒で有機ケイ素の新合成反応を発見する

ルテニウム触媒を使って新反応を探しているところ
ルテニウム触媒を使って発見した新反応の例

ケイ素はパソコン内部の集積回路や太陽電池パネルなどの半導体素子として有名です。それらを炭素でデコレーションしたのが、「有機ケイ素」化合物です。これは、半導体の性質を持つケイ素、有機物の柔らかさを組み合わせた新しい材料として注目されています。しかしその合成は難しく、わずかな水や空気で分解してしまう原料や、引火性の高い試薬を用いなければ作ることはできません。そこで私は、有機ケイ素化合物をもっと簡単で安全に合成できる反応の開発を目指し研究をしています。
では、どんな方法で目標とする反応をみつけるのでしょうか?私の研究では、「金属触媒」がその鍵を握っています。触媒とは、少し加えるだけで化学反応を活性化してくれる化学物質のことです。これまでに知られている触媒反応では、ケイ素同士のつながりを壊した生成物しか得られませんでしたが、ある種のチタン、およびルテニウム触媒を利用することで、ケイ素の骨格を壊すことなくきれいに反応が進むことを発見しました。
知られている金属触媒だけでも非常に数が多く、またそれがどんな反応に適しているかは、実際に反応させてみるまで分かりません。どうすれば望む反応になるのかを、学生たちと一緒に日々あれこれと考えながら研究を進めています。

准教授 菅野 研一郎 KANNO kenichiro
研究キーワード 有機金属化学,有機ケイ素化学,有機合成化学,機能性有機材料,芳香族化合物
研究分野 有機化学無機・錯体化学
主な研究テーマ
  • 遷移金属触媒を用いた新規オリゴシランの合成法の開発
  • 蛍光性を示すσ-π共役オリゴシラン類の合成物性評価
  • ケイ素が置換した多環式芳香族化合物の新規合成法の開発
研究概要

遷移金属を用いた,有機ケイ素化合物の新しい合成法の開発を中心に研究を行っている。遷移金属錯体の特性を活用することで,新しい方法論でケイ素-ケイ素結合を形成する反応の開発に取り組んでいる。また,ケイ素と炭素π共役系化合物との融合による新規機能を有する化合物の創製も目指して研究を行っている。

提供できる技術 ・応用分野

有機化合物の合成,有機機能性分子の合成と物性評価

主要な所属学会

日本化学会,有機合成化学協会,ケイ素化学協会,近畿化学協会,先端錯体工学研究会

論文
  • Synthesis of Bis(alkenyl)oligosilanes via Double Hydrosilylation and Their Structures and Photophysical Properties, Asian Journal of Organic Chemistry, 2025, 14, e202400567.
  • Ruthenium-Catalyzed Hydrosilylation of Aldehydes with Hydrooligosilanes, Zeitschrift für anorganische und allgemeine Chemie, 2024, 650, e202400122.
  • Ruthenium-Catalyzed Hydrosilylation of Alkynes with Preservation of the Si‒Si Bond of Hydrooligosilanes: Regio- and Stereoselective Synthesis of (Z)-Alkenyloligosilanes and Carbonyl-Functionalized Alkenyldisilanes. J. Organomet. Chem. 2022, 961, 122234.
受賞歴
  • 平成21年度日本化学会北海道支部奨励賞
  • 2018年度群馬大学ベストティーチャー賞優秀賞
  • 2021年度群馬大学ベストティーチャー賞学長賞
  • 2023年度群馬大学ベストティーチャー賞優秀賞
最終更新日: