究極の脱炭素燃料アンモニアによる発電システム.制御則をどのように組込むか手腕が問われる.
毎秒2,000メートル級の極超音速ジェット可視化写真.ジェット周囲に広がるしわ状の模様は「音波」である.

「1903年、ライト兄弟による世界初の動力飛行」
 わずか120年前の出来事です。いまや、時速1000キロの空の旅は身近なものとなりました。エベレストより高い空を、秒速250メートルで突き進む。外の気温はマイナス50度、気圧は地上の1/3。外に放り出されれば、瞬く間に命を失う極限の世界です。それでも人々は、映画を楽しみながら快適に目的地に到着します。
 現在世界では、これをはるかに超える速度で飛行する航空機の研究が進められています。日本でも、宇宙航空研究開発機構(JAXA)において、マッハ5で巡行するジェットエンジンの研究が行われています。飛行速度は従来の航空機の5倍。機体が受ける風圧は25倍(2乗に比例)となり、エンジンから放出されるジェット騒音のエネルギーは数十万倍(8乗に比例)となります。これまでの常識が通用しない、まさに極限の世界です。
 私は、学生時代から航空機エンジン研究に取り組んできました。現在は、次世代の超音速エンジンから放出されるジェット騒音を低減するため、音波放出メカニズムの解明ならびに低騒音ノズル開発を行っています。航空宇宙工学は、大変面白く、やりがいのある研究分野です。わたしたちと一緒に未知の問題に取り組んでいきましょう。

教授 荒木 幹也 ARAKI mikiya
研究キーワード ジェットエンジン,ロケットエンジン,自動車エンジン,カーボンニュートラル,ナノ微粒子計測,流体騒音,燃焼
研究分野 流体工学熱工学航空宇宙工学ナノマイクロ科学エネルギー学
主な研究テーマ
  • アンモニア/水素混合燃料を用いた脱炭素発電システムの研究
  • 自ら考える電子制御ユニットによる自律エンジン制御システム
  • 超音速ジェットから放射される騒音の音源位置と規模の精密探査
研究概要

アンモニアエンジンは手強い.アンモニアは燃える.燃えるからエンジンを運転できる.ただしその炎はすぐに消えてしまう.私たちは,究極の脱炭素燃料であるアンモニアに注目しています.バイオマス燃料の製造現場で本来費用をかけて棄てていた大量水蒸気を含む「超劣質アンモニア燃料」でさえ,私たちは利用します.そのままではまともに発電することすら難しい劣質燃料で安定運転を維持するには,針の穴に糸を通すような制御が求められます.変動する燃料組成・変動する電力需要に自律追従する柔軟な制御アルゴリズムを開発し,この難問に挑んでいきます.
ジェット速度が2倍になるとジェット騒音の強さは256倍になる.ライトヒルによって導かれた「ジェット騒音の8乗測」は,現実のジェット騒音の性質をよく表すことが知られています.極超音速で飛行する次世代航空機にとって,避けることのできない究極の課題です.ジェット騒音と呼ばれるこの音は,ノズルから排気されたあとの「何もない空間」から放出されます.空気の運動が甚大な騒音を発生するのです.この音がどこから来るのか,私たちはこの難問に挑んでいきます.

提供できる技術 ・応用分野
  • カーボンフリー発電に関する技術分野
  • 流体騒音低減技術に関する技術分野
  • 圧縮性流体力学の応用に関する技術分野
  • サブミクロン/ナノ微粒子計測に関する技術分野
  • 液体微粒化に関する技術分野
主要な所属学会

日本機械学会,日本航空宇宙学会,自動車技術会,日本燃焼学会,米国航空宇宙学会

論文
  • アンモニア/水素混合燃料を用いた火花点火機関の熱効率を支配する影響因子, 日本エネルギー学会誌, 103巻, 6号, pp.44-53, 2024.
  • Effects of Injection Parameters on the Amount of Wall-Wet Fuel in a Port-Fuel-Injected Spark-Ignition Engine During Cold Start, International Journal of Engine Research, Vol. 22, No. 1, pp.184-198, 2021.
  • Experimental Investigation of Jet Noise Sources in a Hypersonic Nozzle at Takeoff, AIAA Journal, Vol. 53, No. 3, pp. 789-794, 2015.
受賞歴
  •  A High Quality Paper Award, SAE International (国際自動車技術会), 2007年10月.
  • 日本機械学会賞(論文), 2010年4月.
  • 横山科学技術賞, 2018年8月.
  •  群馬大学ベストティーチャー賞・学長賞, 2020年8月.
  •  日本機械学会賞(論文), 2024年4月.
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