デバイスは指先で摘めるサイズです。
デバイスは自作の装置で動かします。

新薬開発には莫大な時間と費用を要し,その開発成功率は年々低下し続けています。この問題の一因は,薬剤候補化合物の薬効や安全性を評価する適切なシステムがないことにあります。そのシステムとして現在は主に実験動物が用いられれますが、実験動物はヒト生体とは乖離があるためヒトにおける薬効や安全性を予測するのは困難です。
そこで、実験動物の代替としてヒト細胞が考えられます。ヒト細胞は,細胞同士が結びつき組織を形成すると、確かにヒト生体に近い機能を持ちます。ただ、ヒト細胞も、培養の継続や機能の保持が困難という課題があります。これは、ヒト細胞は生体内では非常に複雑な物理化学的な環境の中で存在しており,そのような環境がなければ機能を保持した状態で培養を継続することができないためです。
そこで,半導体のチップの加工などに使用される微細加工技術により、数百マイクロメートル程度の非常に細い流路を持つデバイスを作製します。そして、その流路構造を用いて生体内の物理化学的な微小環境を再現することで,ヒト生体機能を模倣するシステムの開発を試みています。このようなシステムを開発している研究者は世界中にいて、このシステムは“生体模倣システム”と呼ばれています。
生体模倣システムは,ヒト生体微小環境を模倣できるため、実験動物を代替して薬剤開発の効率化を促進することが期待されています。また,生体を模倣することを目指したものであるため,器官形成過程の理解や疾患の病理解明への貢献も期待でき,幅広い分野に応用可能な裾野の広いシステムであります。

助教 髙田 裕司 TAKADA yuji
研究キーワード 生体模倣システム,BioMEMS,インピーダンス計測,微細加工
研究分野 機械力学ロボティクス電気電子工学ナノマイクロ科学人間医工学
主な研究テーマ
  • 組織の動的変化を電気的特性により評価するシステムの研究開発
  • 組織への機械的刺激を付与するシステムの研究開発
研究概要

細胞培養系としてのマイクロ流体デバイス(生体模倣システム)に関する開発・応用の研究を実施している。特に,評価方法として電気特性の計測に着目しており、組織の動的変化をリアルタイムにモニタリング可能なシステムの開発に取り組んでいる。このシステムにより,薬剤毒性や細胞の増減がモニタリング可能であることを示した。現在は機械的刺激を付与可能なデバイスの作製を試みている。そして,デバイスに開発した評価手法を適用することで,従来の細胞培養系では観察できなかった現象のモニタリングの実現を目指している。

提供できる技術 ・応用分野

提供技術:バイオマイクロシステム作製技術,組織の電気特性評価技術
応用分野:創薬、組織工学、再生医療

主要な所属学会

機械学会,電気学会,化学とマイクロ・ナノシステム学会

論文
  • Online monitoring of epithelial barrier kinetics and cell detachment during cisplatin-induced toxicity of renal proximal tubule cells, The Analyst 2024年5月20日.
  • Cells sorted off hiPSC-derived kidney organoids coupled with immortalized cells reliably model the proximal tubule, Communications Biology 2023年5月4日.
  • Evaluation of Trans-epithelial Electrical Resistance by Removal and Replenishment of Extracellular Ca2+, IEEJ Transactions on Sensors and Micromachines 2022年2月1日.
受賞歴
  • 2023年度日本機械学会年次大会 マイクロ・ナノ工学部門 優秀講演論文表彰
  • 第38回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム 奨励賞
最終更新日: