土の性質、地盤のふるまいを知る

ベトナムでの土石流災害の現地調査
土砂災害のリアルタイム予測システム

地球の奥深くから湧き上がり、吹き出し、飛び散り、洗い流され、降り積もり、押しつぶされ、長期間をかけて形成される私たちの足元の「地盤」とその構成材料としての「土」― その内部にはとても不思議な世界が広がっている。岩のかけらに由来する土粒子、その隙間を埋める水分や空気。こうした固体・液体・気体の三相が互いに力をやり取りしながら、集合体としての土の巨視的な性質を決定づけている。
 幼少期の粘土遊びを思い出す“細かな粒子主体の粘性土”では、粒子間のわずかな隙間の水分移動が粒子の静電気力で阻害され、総じて水はけの悪い軟弱な土となる。一方、サラサラの手触り感を持つ“粗い粒子主体の砂質土”では、粒子同士のかみ合いや摩擦によって硬い土骨格が発揮されるが、ひとたび地震などでそのかみ合いが外れると、土粒子間の水分が押しつぶされて水圧上昇をもたらし、液状化現象を誘発することがある。
 社会を支える構造物は地盤の上や中に建設される。また、国土の大部分が山地である我が国では都市の背後に急傾斜の地盤が迫っている箇所も多い。安全・安心な街づくり、有効な防災対策のためには、土の性質と地盤のふるまいを知るための研究が欠かせない。

研究室についてSTUDENT
研究室での実験
暑気払い(BBQ)の集合写真
教授 若井 明彦 WAKAI akihiko
研究キーワード 地盤,防災,地震,豪雨,土砂災害,地すべり,有限要素法
研究分野 土木工学
主な研究テーマ
  • 地震や豪雨時の斜面災害メカニズムの解明とリスク評価
  • 斜面のクリープ性変動の数値シミュレーション手法の開発
  • 地盤と基礎あるいは擁壁との力学的相互作用の解明
研究概要

気候変動に伴う極端気象の増加と,頻発する大地震によって,土砂災害による人命や財産の損失はわが国だけでなく地球規模で近年急速に増加している。当研究室では,こうした自然災害事象に警鐘を鳴らす国連SDGsと軌を一にした,地盤防災指向の各種研究課題に取り組んでいる。例えば,地震や豪雨時の斜面崩壊メカニズムの解明とその早期警戒に資する各種ハード・ソフト対策技術の開発,長期間のクリープ性変動を伴う地すべり現象のコンピュータによる高精度シミュレーション,地盤改良を施した新たなタイプの杭基礎の支持力特性を評価できる都市再生に不可欠な耐震設計手法の提案など,実務的に重要な研究テーマを扱っている。特筆すべきは,研究室で開発された土の弾塑性応答特性を考慮した有限要素解析プログラムである。同手法は,国の国土強靭化政策の中でも実用化されている。こうした研究成果を評価するため,ひとたび国内外で大規模災害が発生すると,大学院生らとともにその緊急調査に出動し,災害要因の分析と将来対策についての実務的な知見を得ることに努めている。

提供できる技術 ・応用分野

具体的な降雨シナリオに基づく斜面災害発生危険度の評価を実現するシステムを開発している。また,研究室で開発された有限要素解析コードは,斜面に限らず広汎な地盤変形・破壊現象の再現を可能とする。

主要な所属学会

地盤工学会,土木学会,日本地すべり学会,日本建築学会

論文
  • Simple Method for Shallow Landslide Prediction Based on Wide-Area Terrain Analysis Incorporated with Surface and Subsurface Flows, Natural Hazards Review, ASCE, Vol.23, Issue 4, Nov 2022, https://doi.org/10.1061/(ASCE)NH.1527-6996.0000578 (2022).
  • Influence of surface water and groundwater flows induced by Typhoon Hagibis (2019) on a landslide in Tomioka City, Gunma Prefecture, Japan, Journal of the Japan Landslide Society, Vol.59, No.5, pp.205-217 (2022).
  • バランス断面法の概念を有限要素解析に導入した新しい斜面変動シミュレーション(BaFEM),応用地質(応用地質学会誌),第64巻,第4号,pp.172-182(2023).
受賞歴
  • IACMAG(国際地盤解析学会),Significant Junior Paper Award 2005(研究奨励賞)(2005年)
  • (社) 日本地すべり学会 論文賞(2008年)
  • (公社)地盤工学会・功労章(2020年)
  • 地盤工学会誌・優秀賞(2022年)
  • 地盤工学会誌・年間最優秀賞(2023年)
メディア情報
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