図1:記録容量を8倍以上にする超多値記録技術
図2:ナノ情報記録素子列(韓国KAISTとの共同研究成果)

IoT(モノのインターネット)の進展に伴い、現在より桁違いに膨大なデータがセンサーより収集されます。インターネットに上げられたビッグデータを記録と高速処理する必要があります。我々は、現在主流であるフラッシュメモリの後継者と言われている相変化情報記録素子の高信頼性、大容量化、高速化と低消費電力化に注目しています。また、カルコゲナイド材料におけるアモルファスと結晶間の相変化や酸化物における導電率の高いフィラメントの形成・消失現象を用い、今後のAI(人工知能)時代で大活躍する脳型計算機の作製に必要な人工シナプスを研究しています。
 図1は窒素添加Sb2Te3を用いて実現した超多値記録です。最初に窒素添加Sb2Te3層全体はアモルファス状態でしたが、プログラミング電流を少しずつ上げていきますと、ジュール加熱によりSb2Te3層の結晶化が進みます。漸進的な結晶化に伴い、素子抵抗が少しずつ下がってきます。従来の記録素子の8倍以上の情報を記録できる超多値記録の実現に成功しました。
 本研究グループは、海外の名門大学韓国の科学技術院KAIST、シンガポールの南洋理工大学(NTU)と中国の電子科技大学UESTC等と国際共同研究を行っています。図2はKAISTとの共同研究成果です。記録素子の大きさはわずか30nm程度で、情報記録密度は207Gb/in.2となります。また、NTUとUESTCの研究者と共同研究を行い、AIに応用可能な超低消費電力の脳型計算機に必要なシナプス素子に関する先進的研究を展開しています。

教授 尹 友 YIN you
研究キーワード 電子デバイス,脳型情報処理,情報記録,太陽光発電,薄膜,ナノ加工
研究分野 物性物理学電気電子工学ナノマイクロ科学応用物理工学
主な研究テーマ
  • 脳型情報処理のための機能材料と素子の開発
  • 不揮発性情報記録素子における多値記録,低消費電力,高信頼性の研究
  • ナノ構造形成・制御とその太陽光発電素子等への応用
研究概要

近年,医療や交通の分野への活用が期待される,革新的コンピューティング技術として,人工ニューロンと人工シナプスからなる脳型情報処理システムが世界中で非常に注目されている。今後,膨大な画像データをリアルタイムで処理する必要となるため,この脳型情報処理システムにおける高集積化と低消費電力化は極めて重要である。本研究室では,この将来の脳型情報処理システムに必要とされる新規機能材料と脳型情報処理デバイスを開発している。
また,今後IoT時代が進んでいくと,より多くのデータを保存する必要があるため,情報記録の重要性が更に高まる。本研究室では,次世代不揮発性情報記録素子の大容量化,低消費電力化と高信頼性化の研究を行っている。
情報処理・記録の他に,本研究室では,ブロックコポリマーによるナノ構造形成と電子線描画によるナノ加工の研究を推進し,これらの最新のナノ技術を駆使して次世代高変換効率量子ドット型太陽電池や光レクテナ等を開発している。

提供できる技術 ・応用分野

電子デバイス作製と評価技術,ナノ構造形成技術,ナノ加工技術,ナノ計測技術

主要な所属学会

IEEE,Material Research Society(米国),応用物理学会

論文
  • O-doped GeTe/Sb2Te3 multilayer chalcogenide for multi-level phase-change device,Jpn. J. Appl. Phys., 64, 04SP29 1-6 (2025).
  • Braille Recognition by E-skin System based on Binary Memristive neural network,Scientific Reports, 13, 5437, 1-10 (2023).
  • C-N-codoped Sb2Te3 Chalcogenides for Reducing Writing Current of Phase-Change Devices,Appl. Phys. Lett., 117,153502 1-7 (2020).
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