
動物細胞は普通、一セットの染色体(遺伝子)を一つの核の中に持っています。ところが、肝臓の大部分の細胞は染色体を複数セット持ち、その中の20-30%の細胞は複数の核に複数の染色体を分けて持っているということをご存知でしょうか。私は肝臓細胞が核や染色体を複数持つのはなぜか、どんなメリットがあるのか、という課題に取り組んでいます。
この研究課題は初めから持っていたものではありませんでした。この課題に「気がついた」一番大事なきっかけは、顕微鏡で核を複数持つ培養細胞を見たことでした。でも、始めはいったい自分が何を見ているのか、まったくわかりませんでした。でも、細胞に見られる現象ならどんなことであっても、我々の役に立たないはずがないと思って観察を続けました。そして写真を他の研究者に見てもらったり過去の研究を調べたりして、あるとき、肝臓細胞はもともと核を複数持つものだという、意外な「常識」に出会ったのです。ここでやっと「肝臓細胞が2つ以上の核を持っているのはどうしてか」という課題にたどりつきました。
今では仔ラットが乳離れする時期に肝臓細胞が核を複数持つ細胞になることがわかっています。でも、なぜか、は明らかになりませんでした。最近、ガン化や予後との関係に注目が集まっています。これからどんなことがわかり、どんな課題が見つかるのか楽しみです。

.jpg)

研究キーワード | 細胞質分裂,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤,画像解析,培養肝臓細胞,多倍数体細胞,翻訳後修飾,情報伝達制御 |
---|---|
研究分野 | 分子生物学構造生物化学機能生物化学細胞生物学 |
主な研究テーマ |
|
研究概要 | 肝臓の大部分を占める肝細胞は,ヒトで50-60%ラットで80%以上が多倍数体である。デデューらは,ラットでインスリンが離乳期に肝細胞を急速に多倍数体化すると明らかにした。スラドキーらはPIDDosomeがガン抑制因子p53を通して肝細胞の倍数性を調節すること,過剰に倍数性を持つ肝細胞は肝細胞癌になりにくいことを明らかにした。このことは,肝細胞の倍数性を調節すれば肝細胞癌の予防に役立つ可能性を示している。ガン抑制因子p53が多倍数体細胞自体を異常な細胞と認識してはいないことも興味深い。しかし一方で肝細胞癌が多倍数体化すると予後が悪くなる、という臨床データも数多く存在する。 |
---|---|
提供できる技術 ・応用分野 | 比較二次元電気泳動法,LC-MSを使ったプロテオーム解析,蛍光顕微鏡観察,画像解析,細胞培養,タイムラプス観察簡易システム |
主要な所属学会 | 日本生化学会,日本細胞生物学会,日本科学教育学会,日本化学会教育会員 |
論文 |
|