図. 製品化された糖加水分解酵素の活性を検出する蛍光糖鎖分子

私たちの体の中には、グルコース(ブドウ糖)などの単糖が鎖のようにつながった糖鎖と呼ばれる生体分子が存在しています。糖鎖はウイルスや病原菌の感染、がん化、細胞分化など、様々な生命現象に関わっています。私たちの体の中で糖鎖がどのような働きをしているかを知ることは、病気を防ぐ方法や病気の早期発見のための診断方法、新しい治療法の開発につながります。
 私たちの研究室では、生体内での糖鎖の働きを理解するために、糖鎖を分解する酵素をターゲットとして、その酵素による反応を簡単に分析できる糖鎖分子ツールの開発を行っています。有機化学の知識と技術を利用して自らデザインした糖鎖分子を合成し、酵素を作用させることで開発した糖鎖分子ツールが酵素の基質として働くかどうかを確認しています。私たちが開発した糖鎖分子が化学メーカーから販売され糖鎖の研究に利用されています。糖鎖分子ツールを使って生体内の反応を模擬的に再現し解析することで、糖鎖の働きを明らかにし、病気の新しい診断法や治療法の開発に貢献したいと考えています。

研究室についてSTUDENT
研究室学生の実験の様子1
研究室学生の実験の様子2
助教 石井 希実 ISHII nozomi
研究キーワード 糖鎖,糖ペプチド,糖タンパク質,化学合成,糖質関連酵素,多糖類
研究分野 生体分子化学農芸化学分子生物学
主な研究テーマ
  • 糖質関連酵素の活性検出プローブの開発
  • 新規糖加水分解酵素の探索研究
  • 天然物由来糖分子を利用した機能性分子の開発
研究概要

生体情報分子である糖鎖を対象としたケミカルバイロジー研究を行っています。有機合成法や酵素法を用いて糖鎖分子や糖ペプチド,糖タンパク質,糖質関連酵素の基質となる糖鎖プローブを合成しています。また,天然物からの糖質分子の抽出,誘導体化による機能性糖鎖分子の開発にも取り組んでいます。これらの糖鎖分子を利用して,糖鎖や糖質関連酵素の機能解明,糖鎖が関与する病気の発症・病態メカニズムの解明を目指しています。

提供できる技術 ・応用分野

糖鎖化合物の合成・構造解析,糖質関連酵素の解析,蛍光糖鎖プローブの合成

主要な所属学会

日本農芸化学会,日本糖質学会,ニュージーランド化学会

論文
  • Synthesis of a fluorescent probe for measuring the activity of endo-β-N-acetylglucosaminidases recognizing hybrid-type N-glycans, Bioorg. Med. Chem., 100, 117612 (2024).
  • Rapid preparation of a glycan oxazoline and a homogeneously glycosylated antibody with an enzyme-immobilized monolithic column, Carbohydr. Res., 536, 109024 (2024).
  • A fluorogenic probe for core-fucosylated glycan-preferred ENGase” Carbohydr. Res., 523, 108724 (2023).
受賞歴

第27回日本糖質学会奨励賞(2024年)

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