身近な金属イオンと有機配位子との組み合わせにより働く分子光触媒

金属錯体とは、金属イオンと配位子からなる分子です。金属イオンと配位子との複合化により、それぞれにはない特異な特性が発現します。近年特に注目されるのが、金属錯体の光機能性です。ルテニウム(Ru)や、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)といった金属イオンと、2,2’–ビピリジンや、1,10–フェナントロリンといった有機配位子とからなる金属錯体は、可視光吸収や電圧印加により高効率に発光するため、ELディスプレイなどの発光素子として利用されます。また金属イオンは、多くの分子との配位により付加体を形成するため、CO2の還元反応などの触媒としても働きます。これらの光応答性と触媒特性とを上手に組み合わせることにより、金属錯体が、環境・エネルギー問題解決のための「人工光合成」光触媒としても働きます。
 私の研究では、これら金属錯体の機能を、身近な金属種を用いて発現させるための研究を行っています。鉄(Fe)や銅(Cu)などの金属種は、産業活動の中で多用されているばかりか、自然界に多く存在するありふれた金属です。これらの金属元素は、周期表では第一遷移金属元素に分類されます。これら第一遷移金属元素からなる金属錯体を用いて発光材料や光触媒を作ることができれば、安価で普及しやすい高機能材料を開発することができます。

准教授 竹田 浩之 TAKEDA hiroyuki
研究キーワード 金属錯体, 光化学, 光触媒
研究分野 無機・錯体化学分析化学無機材料化学エネルギー関連化学
主な研究テーマ
  • 3d金属からなる金属錯体光触媒の開発
  • 光機能性金属錯体の開発
研究概要

光エネルギー変換技術の一つとして,大気中CO2の資源化を目指す「人工光合成」は,環境・エネルギー問題の解決に重要である。金属錯体は,優れた光機能性・触媒特性を発現するため,高効率にCO2を還元することができる。しかし,用いられる金属種は希少な金属に限られていた。本研究では,地殻中豊富に存在する金属種の錯体形成挙動を理解することにより,こうした金属種特有の機能性を発現する機能性分子を開拓している。これにより,安価な金属種を用いた高効率CO2還元光触媒や,発光性分子を開発する。

提供できる技術 ・応用分野
  • CO2固定化
  • 光エネルギー利用
  • 発光性材料
主要な所属学会

日本化学会, 光化学協会, 錯体化学会, 複合系の光機能研究会

論文
  • “Photocatalytic CO2 Reduction Using Mixed Catalytic Systems Comprising an Iron Cation with Bulky Phenanthroline Ligands” Inorg. Chem. 2024, 63, 7343.
  • “Heteroleptic Cu(I) Bipyridine Complexes as Redox Photosensitizers for Photocatalytic CO2 Reduction” Bull. Chem. Soc., Jpn. 2023, 96, 519.
  • “Heteroleptic Cu(I) Phenanthroline Complexes Bearing Benzoxazole and Benzothiazole Moieties for Visible Light Absorption” Chem. Lett. 2022, 51, 69.
最終更新日: