

現在日本では橋やトンネルの老朽化が深刻化しており、崩落事故などが発生している。さらに、2030年にはおよそ半数のインフラ設備が老朽化すると報告されているため、インフラ検査の需要は年々増加している。しかし、現在の日本は少子高齢化による労働人口の減少により人手不足が深刻化している。そのため、少ない人員で簡単にかつ低価格でメンテナンスが実施できる技術が求められている。ここでは磁石とコイルを用いて検査対象に電磁力による振動を発生させることで、検査を行える技術について研究している。検査対象に電磁力を発生させる原理図をFig. 1に示す。フレミングの左手の法則により、永久磁石の磁界が人差し指、渦電流が薬指、電磁力が親指に該当する。渦電流(薬指)の向きを手前から180度回転させると、電磁力(親指)が下向きに反転する。これを繰り返すことで、電磁力による振動が発生する。
この技術は将来的に、車や鉄道車両にセンサーを搭載し、走りながらメンテナンスを実施することを目標にしている。これにより利便性と環境の調和を達成しつつ、より安全な社会を実現することができる。 現在は基礎検討として、研究室内で研究が行えるようにテストピースを作成して実験を行っている。さらに、コンピューターシミュレーションを使用して測定原理の解明を行うと共にセンサーの最適な形状などを解析している(Fig. 2)。
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研究キーワード | 非破壊検査、電磁力振動、インフラメンテナンス、電磁気学、三次元有限要素法、強磁性体、コンクリート |
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研究分野 | 電気電子工学土木工学安全工学材料工学 |
主な研究テーマ |
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研究概要 | 球状黒鉛鋳鉄は機械的特性に優れた材料である一方、製造時に引け巣が発生しやすいことが知られている。そのため、非破壊検査を実施し品質を保証する必要がある。一般的に非破壊検査で使われている手法として、超音波探傷や放射線試験が挙げられる。しかし、超音波探傷は検査表面の研磨や接触触媒を必要とするなど検査の前後に手間を要する。また、放射線試験は検査コストが高額であることや、被爆の危険性が考えられる。そこで、本研究では、電磁力振動を利用した測定手法を提案する。この測定手法は、永久磁石の直流磁界と交流励磁コイルによる渦電流から電磁力による振動を発生させることで測定を行う。そして、振動の強度を比較することで、引け巣の有無を判定する。また、本研究で得られた知見を鋳鉄以外の分野に応用する研究にも現在取り組んでいる。具多的には、鉄筋コンクリート内部の腐食検査、強磁性体鋼板に発生した裏面き裂検査である。特に鉄筋コンクリート内部の腐食検査は、老朽化が深刻化している国内のインフラメンテナンスにおいて実用化が早急に求められている分野である。 |
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提供できる技術 ・応用分野 | 提供できる技術:プログラミングによる有限要素法解析、Pythonによる測定器制御 |
主要な所属学会 | 日本非破壊検査協会,日本鋳造工学会,計測自動制御学会 |
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