人工細胞膜のリポソーム
人工細胞モデル・生体分子ロボットの概略図

細胞膜は、リン脂質という両親媒性分子が二重膜(リン脂質二重膜)を形成しています。この細胞膜の厚さは、約5 nm(ナノメートル)と非常に薄いですが細胞の内側と外側を隔てています。細胞膜には、無数の膜タンパク質が存在し、細胞内外への物質輸送や情報伝達といった生命活動に重要な役割を担っています。膜タンパク質は薬剤のターゲットになっているため、目的の膜タンパク質の機能を詳細に観察できる場の構築が必要となってきました。細胞膜と同様なリン脂質二重膜から構成されている人工細胞膜のリポソームにより、膜タンパク質の解析研究が行われてきました。しかし、様々な生体分子が関与する細胞内の複雑な反応機構をリポソームで再現することは未だ困難です。そこで、私はタンパク質、脂質、DNA等の様々な生体分子をブロックのようにリポソームへ組込む技術を確立することで、細胞内の複雑な反応機構をリポソーム内で再現し細胞機能の理解を目指しています。自分の思い通りに、細胞内の複雑な反応をリポソームに再現できると、例えば、外部環境変化を入力としリポソーム内で演算と出力を可能にする生体分子ロボット、希少な物質を効率良く産生できる人工細胞の作製や、生命の起源の解明が可能になります。

研究室についてSTUDENT
実験室の様子
研究室旅行
准教授 神谷 厚輝 KAMIYA koki
研究キーワード 人工細胞膜,リポソーム,膜タンパク質,人工細胞モデル,人工タンパク質,合成生物学,マイクロデバイス
研究分野 ナノマイクロ科学人間医工学生体分子化学機能生物化学生物物理学
主な研究テーマ
  • 人工細胞膜をもちいた生命現象の理解
  • 膜タンパク質の機能を工学的に応用する研究
  • 複雑な人工細胞モデル実現に向けた研究
研究概要

細胞膜は物質輸送・情報伝達等に関わる膜タンパク質が多く存在し,生命機能の維持に大きな役割を果たしている。細胞膜には,多種類な生体分子が存在しているため,目的の生体分子の素反応を観察することは難しい。そこで,人工細胞膜であるリポソームを用いて,膜タンパク質等の生体分子の機能観察を行っている。さらに,化学,生物学,機械工学の技術を組合せ,生体分子をブロックのようにリポソームに組込むことにより細胞に近い人工細胞モデルを精密に構築し,細胞内で起こる複雑な生体メカニズムの解明,生命の起源の解明や有用薬物等の効率的な物質産生への貢献を目指している。

提供できる技術 ・応用分野

リポソーム作製,膜タンパク質発現・精製・機能解析,各種顕微鏡観察,イオンチャネル計測,マイクロデバイス作成

主要な所属学会

日本化学会,日本生物物理学会,日本生化学会,細胞をつくる研究会,米国生物物理学会

論文
  • Molecular Transportation Conversion of Membrane Tension Using a Mechanosensitive Channel in Asymmetric Lipid–Protein Vesicles, ACS Applied Materials & Interfaces, Vol.16 (2024) pp.21623-21632.
  • Control of Reversible Formation and Dispersion of the Three Enzyme Networks Integrating DNA Computing, Analytical Chemistry, vol.95 (2023) pp.9548–9554.
  • Cell-sized asymmetric lipid vesicles facilitate the investigation of asymmetric membranes, Nature Chemistry, Vol. 8 (2016) pp.881-889.
受賞歴
  • 群馬大学ディスティングイッシュト・ヤングリサーチャー(2023年)
  • 若手優秀賞 化学とマイクロ・ナノシステム学会(2019年)
  • 若い世代の特別講演会証 日本化学会第99春季年会 (2019年)
  • 優秀講演賞(学術) 日本化学会第93春季年会 (2013年)
最終更新日: