放射線がん治療中の体内運動の影響評価

標的(がん)中心を通る平面の放射線線量分布測定設定
標的が静止状態の測定とシミュレーションの放射線線量分布例

がんの治療法の一つに、放射線をがんに照射して細胞を破壊する「放射線治療」があります。群馬大学には重粒子線医学センターがあり、炭素イオンを用いた重粒子線によるがん治療が日々行われています。また、重粒子線医学研究センターでは重粒子線がん治療に関する研究が行われており、本研究室は同センターと共同で研究を行っています。
 放射線治療治療では、がん細胞に正確に放射線を当てることが重要です。しかし、照射中に呼吸などによって肺や周囲の臓器が動くため、放射線が狙った場所からずれてしまうことがあります。このようなずれが生じると、がん細胞に十分な放射線が届かず、治療効果が低下する可能性があります。また、周囲の健康な組織に不要な放射線が当たってしまい、副作用のリスクが高まることもあります。
 本研究は、放射線治療中のがんの動きが治療の効果にどのような影響を与えるのかを評価し、何mmの動きまでなら治療可能かを示します。具体的には、呼吸によるがんの動きを再現して放射線を測定します。また、呼吸によって、がんがどのように放射線を受けるのかをシミュレーションして、評価を行います。
 このように、許容される動き量を示すことにより、がん細胞を効果的に破壊しつつ、周囲の健康な組織への影響を最小限に抑えた治療が可能になります。

助教 古田 有希 FURUTA yuki
研究キーワード 放射線治療、重粒子線治療、パッシブ照射、積層原体照射、呼吸性移動、線量分布シミュレーション
研究分野 人間医工学
主な研究テーマ
  • 呼吸性移動を伴う重粒子線積層原体照射の線量分布評価
  • 呼吸性移動を伴う重粒子線積層原体照射のビーム飛程変化指標を使用した影響評価
  • 重粒子線積層原体照射における線エネルギー付与(LET)分布計算システムの開発
研究概要

群馬大学重粒子線医学研究センターと共同で重粒子線がん治療の精度向上に関する研究を実施している。放射線がん治療におけ要求は、腫瘍に必要な放射線を照射しつつ、周囲の正常組織への不要線量を可能な限り低減することである。本研究は同センターで採用されている照射方法の1つである積層原体照射に着目している。照射中のがんの呼吸性移動に対して呼吸性移動を考慮した線量分布の測定やシミュレーションを行い、治療上許容される動き量を提示すことに取り組んでいる。また、近年治療計画においてその重要性が注目されている線エネルギー付与(LET)分布のシミュレーションにも取り組んでいる。

提供できる技術 ・応用分野

重粒子線治療計画、線量分布測定技術、線量分布シミュレーション

主要な所属学会

日本医学物理学会

論文
  • Evaluation of dose distributions and respiratory motion tolerance for layer-stacking conformal carbon-ion radiotherapy. Radiol Phys Technol 18, 3–16 (2025)
最終更新日: