空力抵抗低減メカニズム解明に向けた実験と解析の概要

自動車や飛行機の周り,それらエンジンの内部などの様々な場面で,空気などの流体の流れが見られます.その流れ方によって,進行方向と逆の力(空気抵抗)が自動車や飛行機に生じたり,エンジンの安定運転が阻害されたりします.これを避けるには,流れを理解し,制御する必要がありますが,大小様々な大きさの渦が相互に影響しあい,非常に複雑な現象となっているため,容易ではありません.
近年,AIは急速に進化しており,Chatgptなどでは,人間の言葉を理解し,翻訳や画像生成などの様々なタスクをこなすようになってきています.このAIを科学の分野に応用し,流れの諸現象の理解や制御に活かす試みをしています.
本研究室では,AIの技術を応用することにより,自動車の空気抵抗低減に向けた円柱の空気抵抗を低減させるための表面形状の検討やそのメカニズムの解明に加えて,航空機ジェットエンジン内部で起きる異常燃焼を排気の騒音から推定する技術の構築などを実施しております.

助教 尾身 興一 OMI koichi
研究キーワード 超音速機,燃焼振動,騒音,機械学習
研究分野 流体工学熱工学航空宇宙工学
主な研究テーマ
  • ジェットエンジン排気騒音からの燃焼器内部における燃焼振動の検知
  • 凹凸表面を有する物体の空気抵抗低減メカニズムの解明
研究概要

本研究室では,機械学習を活用した流体現象の制御およびメカニズム解明を目指し,以下二つのテーマに取り組んでいる.
一つ目は,ジェットエンジン開発の課題の一つである燃焼器内部の燃焼振動の発生回避に向け,計測が容易なエンジン排気騒音からの燃焼振動発生の検知手法を確立する.エンジン排気騒音においては,ジェット騒音が支配的となっており,燃焼器内の変化を捉えるのは容易ではない.そこで,効果的な検知手法の確立のため,物理法則を考慮した機械学習モデルを活用し,燃焼器内の圧力振動に対して敏感な物理構造を明らかにするとともに,ジェット騒音に対しロバストに燃焼振動発生を検知するモデルを構築する.
二つ目は,微細凹凸形状を有する物体の空気抵抗低減メカニズムの解明である.微細表面により,物体周りの流れの剥離や後流の流体構造が変化し,空気抵抗が低減されることが知られているが,そのメカニズムは不明である.機械学習を活用し,粒子画像から微細構造に起因する渦を解像するための流速場超解像モデルの構築,モード分解手法による微細構造による渦,ケルビンヘルムホルツ渦,カルマン渦の相互作用を解析し,抵抗低減メカニズムを明らかにする.

提供できる技術 ・応用分野
  • ジェットエンジン・ラムジェット・ロケットエンジンの排気騒音からの燃焼振動の検知技術
  • 機械学習を活用した流体場の超解像
  • 振動モード解析による,流体振動現象の解明と制御
主要な所属学会

日本航空宇宙学会,日本燃焼学会,日本機械学会

論文
  • Effects of temperature ratio on combustion instability in a non-premixed hydrogen-rich ram combustor. International Journal of Hydrogen Energy,2024, 49, 14-22
  • Nonlinear mode decomposition of combustion instabilities under various jet-to-crossflow momentum ratios in a hydrogen-rich ram combustor using a deep Koopman network, Combustion and Flame, 2024, 268, 113643.
  • Instability and mode transition analysis of a hydrogen-rich combustion in a model afterburner. Proceedings of the Combustion Institute, 2021, 38(4), 5933-5942.
受賞歴
  • Best Paper Award (2025)
最終更新日: