「分子がどのように集まっているか」がわかると..

脂質分子の集まりやすさを調べる装置

我々の周りは生活を便利にする多くの分子で溢れています。しかし,その性質は必ずしも分子の構造式だけでは理解できません。例えば,スマートフォンのガラス表面には指紋等の汚れが付くことを防ぐため,薄~く有機分子がコーティングされています。もちろん,使われる分子は汚れの付着を抑えるように開発されたものですが,ガラス表面上における分子の集まり方や向き(立ち上がっている? or 倒れている?)も機能性に影響します。こういった機能性材料だけでなく,ヒトをはじめとする生物も多種多様な生体分子で構成され,生体内で“分子がどのように集まっているか”がわかると,生命機能のメカニズムの理解につながります。
分子の大きさは一般的に10億分の1メートル程度のサイズであり,その集まり方を目で見ることは無理ですが,「光」を用いた計測手法によって分子の並び方や向きを知ることができます。こういった技術を使って,生体分子や機能性材料を対象として,分子集合状態と機能性の関係を明らかにする研究を行っています。

准教授 下赤 卓史 SHIMOAKA takafumi
研究キーワード 物理化学,界面化学,有機フッ素化学,生物物理学,振動分光学
研究分野 物理化学機能物性化学生体分子化学
主な研究テーマ
  • 生体分子の集合構造と機能性に関する研究
  • 界面や溶液の物性の分子論的理解
  • 有機フッ素化合物の物理化学
研究概要

物質の性質は分子の一次構造だけでは理解できず、分子の集合構造や配向に大きく依存します。例えば、我々の生活に欠かせない水に関しても、水溶液のようなバルク系、水の表面(気水界面)、有機材料に含まれる微量な水はそれぞれ異なる顔を持ち、これらの性質の違いを理解するには分子の集合状態の把握が欠かせません。赤外・ラマン分光法に代表される振動分光法は、分子がもつ官能基の情報を得る手法として広く知られていますが、分子の集合状態、分子間相互作用の解析においても力を発揮します。気体、液体、固体など、試料の状態に依らず測定できることも大きな特徴で、薄膜試料のような界面に吸着した分子については官能基ごとの配向情報を得ることも可能です。こういった振動分光法の利点をフル活用し、生体分子、機能性材料を対象として、分子集合構造と機能性の関係を徹底的に理解すべく、研究を進めています。

提供できる技術 ・応用分野
  • 赤外・ラマン分光測定・解析
  • スペクトルの多変量解析(ケモメトリックス)
  • 量子化学計算
主要な所属学会

日本化学会,日本分析化学会,日本分光学会,分子科学会

論文
  • ラマン分光スペクトルデータ解析事例集~高分子,電池,電子デバイス,炭素材料,ガラス,医薬品,食品,細胞・組織~ (第5章 第2節 ラマン分光法によるパーフルオロアルキル鎖のねじれ構造解析) 技術情報協会,98-105(2022).
  • Nafion 膜中に存在する束縛水の発見と水和構造の解明, Jasco Report,Vol.57,No.1,1-7(2015).
  • Insights on the Molecular Orientation of Oligo(p-phenylene vinylene) Derivatives with Alkyl Chains in Langmuir Films, J. Phys. Chem. C, 127, 9336−9343 (2023).
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