いろいろな蛍光色素で染色した細胞の写真
蛍光顕微鏡

2003年、ヒトのゲノム(遺伝子)が完全に解読されました。これは人類史に残る偉業です。解読の結果、約2万4千のタンパク質が存在することはわかりましたが、実は機能や役割がわかっているのはその半数にしかすぎません。私たちの研究室では、このような機能未知タンパク質の機能を誰よりも先に見つけ出そうと研究を進めています。でもこれは、そう簡単なことではありません。例えて言うなら、「見たこともない小さなネジ」を手渡されて、「このネジが車のどこに使われているか、設計図なしで探してください」と言われるようなものです。私たちは、分子生物学・生化学的な実験手法だけでなく、タンパク質の形(立体構造)に基づいた構造生物学的な機能予測などさまざまな手法を駆使して、推理小説のように少しずつ証拠を集めて機能解明へとつなげていきます。中には、薬や医療に役立つようなすごい遺伝子が、まだ発見されずに眠っているかもしれません。そう考えると、私たちの研究は「宝探し」とも言えるのです。あなたも、一緒に遺伝子の宝探しをしてみませんか?

准教授 行木 信一 NAMEKI nobukazu
研究キーワード 大腸菌,酵母,翻訳系,タンパク質合成系,ミトコンドリア,抗生物質
研究分野 分子生物学
主な研究テーマ
  • 細菌およびミトコンドリアにおける翻訳停滞解消機構の研究
  • 翻訳系を介した抗生物質耐性機構の研究
  • 機能未知遺伝子の機能解明
研究概要

リボソームによる翻訳は、さまざまな要因でmRNA上に停滞することがあり、これを解消できないとリボソームが再利用できず、細胞に致死的な影響を与える。この問題を解決するのが「翻訳停滞解消因子」であるが、多くの生物種に2種類以上存在する理由は明らかでない。当研究室では、大腸菌、酵母、ゼブラフィッシュ、ヒトなどを用い、これら因子の機能を解析している。特に注目しているのが真核生物に保存されるC12orf65(MTRFR)で、ヒトではその機能不全がミトコンドリア病と関連し、日本人患者例も報告されている。この因子の分子機構解明は、治療法開発に向けた重要な基礎研究といえる。また、酵母を用いた研究では、特定の翻訳停滞解消因子が抗生物質による翻訳阻害に対処することを発見し、新たな抗生物質耐性機構として創薬研究への応用が期待される。

提供できる技術 ・応用分野

遺伝子工学,無細胞タンパク質合成,タンパク質精製,NMRによるタンパク質の立体構造解析,Flow cytometry解析

主要な所属学会

日本分子生物学会,日本RNA学会,日本生化学会

論文
  • Knockout of the mitoribosome rescue factors Ict1 or Mtrfr is viable in zebrafish but not mice: compensatory mechanisms underlying each factor’s loss. FEBS Open Bio. (2025).
  • Stalled ribosome rescue factors exert different roles depending on types of antibiotics in Escherichia coli. NPJ Antimicrob Resist. 2(1):22, (2024).
  • A stalled-ribosome rescue factor Pth3 is required for mitochondrial translation against antibiotics in Saccharomyces cerevisiae. Communication Biology, 4, 300 (2021).
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