AIを利用した新しい材料の設計に向けて

コンピューターを活用して実験を予測

 スマートフォンや自動車、プラスチックを始めとし、私たちの生活には様々な「材料」があふれています。より軽くて丈夫なプラスチックや、電気をたくさん貯められるバッテリーなど、世の中をもっと便利にする「新しい材料」を作るには、これまでは研究者が実験室で試行錯誤を繰り返し、材料合成を行う必要がありました。そこには、研究者の経験や勘に頼らざるを得ないという課題があり、膨大な時間とコストがかかっていました。そこで私たちの研究室では、実験を行うだけでなく「コンピューター」の力を活用して材料設計を行う研究を進めています。料理を作る前にレシピを考えるように、コンピューターの中で原子や分子の動きをシミュレーションし、材料を作る反応を予測するのです。加えて、最近では人工知能 (AI) の力を借りることで、人間の力だけでは解析しきれない膨大なデータから、より良い材料を作るためのヒントを見つけ出す研究も行っています。

 この研究が進めば、まだ世界にない革新的な材料を、これまでよりずっと早く、ピンポイントで見つけ出すことができるようになります。私たちの未来の暮らしや地球環境を大きく変えるものづくりを目指して、日々の研究に取り組んでいます。

助教 松原 希宝 MATSUBARA kiho
研究キーワード 計算化学、第一原理計算、機械学習、マテリアルズ・インフォマティクス、有機材料
研究分野 有機材料
主な研究テーマ
  • 半経験的量子化学計算による反応機構解析の研究
  • 機械学習法を活用した有機材料合成の反応性評価
  • データ駆動型アプローチによる機能性材料の設計技術の開発
研究概要

近年、カーボンニュートラル社会の実現に向け、環境負荷の低い有機材料への転換や革新的な新材料開発が急務となっています。しかしながら、材料の中でも、とりわけ有機材料の開発においては、分子の立体障害や電子状態、溶媒効果など多数の要因に反応挙動が左右されるため、事前にその反応性を見積もることは極めて困難です。この不確実性が、材料設計における試行錯誤と開発コストを押し上げる大きな要因となっています。そこで我々の研究では、有機材料全般の化学反応を対象とし、計算化学並びに機械学習法を援用して、その反応性を予測する手法の構築を試みています。具体的には、反応挙動に影響を及ぼすと考えられる解釈性の高い物理化学パラメータを量子化学計算により算出し、それらを説明変数として機械学習モデルに組み込むことで、材料の「反応しやすさ」を定量的に評価・予測することに挑戦しています。これにより、データ駆動型の効率的な材料設計プロセスの実現を目指しています。

提供できる技術 ・応用分野

量子化学計算による反応機構解析・物性予測、機械学習法を用いた反応性評価

主要な所属学会

高分子学会、日本フッ素化学会、人工知能学会

論文
  • Computationally complemented insights into new generation solvents for radiation-induced graft polymerization, Materials Today Chemistry, 45, 102610. (2025)
  • GFN‐xTB‐Based Computations Provide Comprehensive Insights into Emulsion Radiation‐Induced Graft Polymerization, ChemPlusChem, 89 (4), e202300480. (2024)
  • Fast-Track Computational Access to Reaction Mechanisms Provides Comprehensive Insights into Aminolysis Postpolymerization Modification Reactions, Molecular Systems Design & Engineering, 7, 1263 – 1276. (2022)
受賞歴
  • 第16回 日本学術振興会育志賞 (2026年)
メディア情報
最終更新日: