食品をより良く安全に 〜静電気技術を用いた食品加工技術の開発〜

パルス電圧
プラズマによるコショウの殺菌

普段私達が利用するスーパーには野菜や肉などの生鮮食品のみならず多種多様な加工食品も並んでいます。加工食品は私達の普段の食生活をより便利に、多様に、安全にすることで豊かなものとしています。加工食品の多くは長期間保存できるものが多いですが、それは食品の加工過程で食品中の微生物が殺菌されているため腐敗が起こらないからです。食品の殺菌といえば、食品を茹でたり焼いたりする加熱調理が思い浮かぶと思います。加熱調理は現在最も広く用いられていて確実な殺菌方法ですが、加熱するのでもちろん素材本来のフレッシュな(新鮮な、生の)風味や栄養は失われます。しかし、フレッシュな風味や栄養は残しつつも殺菌された安全な食品を食べたい! そこで私達は大気圧非平衡プラズマとよばれる”熱くない”プラズマや100ナノ秒(1ナノ秒は10億分の1秒)程度の極瞬間的なパルス電圧といった静電気技術を活用して食品の非加熱殺菌技術の開発を行っています。また食品の加工においては殺菌のみならず、食品素材の性状(硬さなどの食感、調理のし易さ)を制御することで離乳食や介護食などのライフステージに合った食品の開発や、製造工程の高効率化・省エネルギー化、製品の差別化などが実現できます。私達は上述の大気圧非平衡プラズマやパルス電圧を用いて食品をより多様で高効率に生産するための加工技術の開発も行っています。

准教授 谷野 孝徳 TANINO takanori
研究キーワード 食品、殺菌、加工、微生物、高電圧パルス電界,大気圧非平衡プラズマ、静電気
研究分野 化学工学
主な研究テーマ
  • パルス電界を用いた微生物制御技術の開発(殺菌、機能誘導)
  • パルス電界を用いた食品性状制改変技術の開発
  • 大気圧非平衡プラズマを用いた固体食品の加工技術の開発(殺菌等)
研究概要

静電気技術を応用した食品加工、具体的には食品の殺菌と性状改変技術の研究を実施しています。
静電気技術にはナノ秒単位(1ナノ秒=10億分の1秒)の超短時間だけ高電界を発生さるパルス電界と呼ばれる技術があります。これを用いてバクテリアなどの微生物を非加熱で殺傷したり機能を引き出したりする研究を行っています。食品を非加熱殺菌できれば,フレッシュな食品本来の風味・栄養素を損なわず長期間の保存が可能となります。また,微生物機能を上手に利用することで,これまでにない機能を持った発酵食品なども開発できます。パルス電界を食品素材に印加することでテクスチャーや物質の透過性などの性状を改変する研究も行っています。食品の性状を改変することで用途に合わせた食品の開発、食品の製造工程の高効率化・省エネルギー化、製品の差別化などが実現できます。
また静電気技術を用いると通常数千℃にもなるプラズマを低温で発生できます。これは冷たいプラズマ(コールドプラズマ)と称され,条件を整えると触れても熱さを感じないものを発生させることもできます。この低温プラズマを用いて香辛料や穀類などの粉粒状固体食品、各種粉体食品の非加熱殺菌も研究しています。

提供できる技術 ・応用分野

微生物制御(検出・殺菌・機能誘導),食品加工,食品開発

主要な所属学会

静電気学会,日本食品工学会,化学工学会

論文
  • Inactivation of Aspergillus sp. spores on whole black peppers by nonthermal plasma and quality evaluation of the treated peppers. Food Control. 97. 94-99 (2019)
  • Inactivation of Bacillus subtilis spores on the sur1face of small spheres using low-pressure dielectric barrier discharge. Food control. 109. 106890 (2020)
  • Sake pasteurization using a novel continuous flow pulsed electric reactor with cooling system. Journal of Food Engineering. 327, 111013 (2022)
受賞歴
  • 第28回横山科学技術賞(2024)
  • 日本食品工学会奨励賞(2024)
  • 日本食品工学会優秀発表賞(2021)
  • 静電気学会シシド奨励賞(2014)
  • 静電気学会論文賞(2013)
最終更新日: