
「積分」は「微分の逆」と高校で習いますが、実は面積や体積を求めるために細かく分けたものをその名の通り「足し合わせる」計算が起源であり、それがのちに登場した微分と融合して「微分の逆」という意味を獲得したといういきさつがあります。私はこの「足し合わせる」計算としての積分を使って様々な物理現象に現れる数学の問題を解析しています。例えば「(電子などの量子を含む)波の方程式」を調べるために、三角関数で表される基本的な波をたくさん「足し合わせ」て様々な波を作ります。また、「電場の方程式」を調べるために、(頭の中で)電荷を分布させてみて、それによってできる電場を点電荷が作るたくさんの基本的な電場の「足し合わせ」として計算します。(実際にはこの方法で電場ではなく電位を計算して、それを微分することで電場を得ます。)このように数式上でお好みの「波」や「電場」を作って柔軟に現象の解析ができるというのが「足し合わせ」である積分の威力です。応用のひとつとして、負の屈折率など自然界ではありえない挙動をする人工物質「メタマテリアル」の数学的解析がこの方法でできるということが最近明らかになってきており、私を含めた様々な研究者がこの問題に取り組んでいます。

研究キーワード | シュレーディンガー方程式,超局所解析,ノイマン・ポアンカレ作用素,スペクトル理論,界面抵抗 |
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研究分野 | 解析学応用数学 |
主な研究テーマ |
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研究概要 | 曲がった空間における偏微分方程式および積分方程式の研究を行っている。具体的な研究内容は三つに大別される。一つ目は、曲がった空間におけるシュレーディンガー方程式の解の超局所的手法による解析である。これまでにはコンパクト空間におけるファインマンの経路積分的手法によるシュレーディンガー方程式の基本解(ファインマン核)の構成、および双曲空間を含む非コンパクト空間における古典的散乱軌道とシュレーディンガー方程式による特異性の伝播の研究成果を上げている。二つ目はノイマン・ポアンカレ作用素と呼ばれる、ポテンシャル論に現れる境界上の積分作用素のスペクトル理論である。ノイマン・ポアンカレ作用素自体は関数解析の発展に大きく関わってきた古典的な積分作用素であるが、最近になってメタマテリアルとの関連からこの作用素のスペクトル理論が関心を集めている。三つ目は、界面抵抗のある物体による電場の摂動である。界面抵抗のある境界では、理想境界と異なり電気ポテンシャルあるいはその流束の連続性が崩れており、その結果理想境界の場合と異なる性質を持った電場が生成される。このような系をポテンシャル論の手法で解析している。 |
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提供できる技術 ・応用分野 |
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主要な所属学会 | 日本数学会 |
論文 |
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