生体膜の構造・物性・機能を総合的に理解

脂質膜リポソームでの脂質の分布
局所麻酔薬が脂質膜相分離に及ぼす影響

生体膜は、脂質二重層膜を物理的本体とする二次元の液体です。この脂質膜中でタンパク質が会合・活性化することで、生体機能が発現します。また、タンパク質の活性は脂質膜の構造や物性とも密接に関連しています。脂質膜はどのようにしてタンパク質の活性を制御しているのでしょうか?私たちは、単純な人工膜を用いて脂質膜の構造や物性を詳細に解析し、その知見を実際の細胞膜に応用することで、生体機能発現のメカニズムを明らかにしたいと考えています。その他にも、脂質膜の構造をナノスケールで解析する技術の開発や、細胞膜を標的とする薬剤の作用機序に関する研究にも取り組んでいます。
さらに、脂質膜がもつバリア機能にも注目しています。私たちの皮膚表面を形成する角層は複数の死細胞とその隙間を埋める脂質膜で形成されています。とりわけ脂質膜は、外界からの異物の侵入を防ぎ、生体内からの水分蒸散を抑える重要な役割を果たしています。そこで、角層に存在する脂質膜の構造や物性がバリア機能に及ぼす影響を明らかにし、その成果を創薬や化粧品分野の研究に応用することを目指しています。

研究室についてSTUDENT
研究室学生の実験の様子
准教授 木下 祥尚 KINOSHITA masanao
研究キーワード 生体膜,細胞膜,角質層,人工膜,構造,物性,機能
研究分野 生物物理学
主な研究テーマ
  • 細胞膜の構造や物性および機能に関する研究
  • 皮膚細胞間脂質膜の構造や物性に関する研究
  • 生体膜分析・解析手法の開発
研究概要

生体膜は脂質二重層膜とタンパク質で形成される、いわば二次元の液体です。特に脂質膜は、その高い流動性ゆえ、解析が困難な研究対象で、脂質膜の構造や物性が生体機能に及ぼす影響については十分に解明されていません。私たちは脂質の分布や拡散挙動を高精度で再現するプローブや、脂質膜の構造をナノスケールで解析する技術を開発し、生体膜のブラックボックスに光を当ててきました。
また、近年では脂質膜のバリア機能にも注目しています。例えば、皮膚表面に存在する角層は複数の死細胞が集まって形成されており、その細胞間隙を脂質膜が埋めています(レンガ・モルタル構造)。この細胞間脂質膜は、外界からの異物の侵入や生体内からの水分蒸散を抑制する重要な役割を担っています。私たちは、角層に存在する脂質膜の構造や物性がバリア機能に及ぼす影響を解明し、その知見を薬剤や化粧品の開発に応用したいと考えています。その他にも、細胞膜を標的とする薬剤の作用機序の解明や、不均一な生体膜を人工的に構築する手法の開発にも取り組んでいます。

提供できる技術 ・応用分野

私たちは生体膜で生じる生命現象を理解し,それを,創薬や医療へ発展させたいと考えています.【応用分野】 医療・創薬, スキンケア,界面活性剤

主要な所属学会

日本生物物理学会, 日本化学会

論文
  • Mechanism of local anesthetic-induced disruption of raft-like ordered membrane domains. Biochimica et Biophysica Acta −Gen. Subj. 1863, 1381−1389 (2019).
  • Assembly formation of minor dihydrosphingomyelin in sphingomyelin-rich ordered membrane domains. Sci. Rep. 10, 11794 (2020).
  • Low-flux scanning electron diffraction reveals substructures inside the ordered membrane domain. Sci. Rep. 10, 22188 (2020).
最終更新日: